スタートアップ企業における適切な投資額は1000万円??〜事業の段階に応じた投資額と方法について徹底解説〜

スタートアップ事業とは、一般に以下のように解釈されています。

短期間で、イノベーションや新たなビジネスモデルの構築、新たな市場の開拓を目指す動き、または概念

ここ数年、スタートアップ事業の業種はブロックチェーンやAI(人工知能)などのIT業界を中心に多くの関心を集めています。

さて、このようなスタートアップ事業をはじめるにあたって必要になるものの1つに、開発費や人件費などの「資金」があります。

では、この「資金」をどのように調達すればよいのでしょうか。

スタートアップ事業には未開拓市場を開拓するものが多く、売り上げが発生するまでには多くの時間を要するため、「投資」が主な資金調達方法になります。
そこで今回はスタートアップ事業における「投資」について投資する立場と投資される立場の2つの立場から解説します。

投資ラウンド

まず、「投資」の話に移る前に「投資ラウンド」という考え方について解説します。
「投資ラウンド」とは、投資家にとっては企業が今どのステージにいるのかを確認するもの、企業・事業にとっては資金調達を行う段階を表したものになります。

以下は、「(投資ラウンド)…(会社のステージ)」です。

  • シード…起業前の段階
  • アーリー…起業直後の段階(スタートアップ段階)
  • シリーズA(エクスパンション)…事業を本格的に開始する段階
  • シリーズB(グロース)…事業がやや軌道に乗り始めた段階
  • シリーズC(レイター)…黒字になって経営が安定し始め段階

(場合によってはシーズンE、Fと続く場合がありますがごく一部のケースに限られるので今回は割愛させていただきます。)

それでは、主に企業側の状況に焦点を当て、「投資ラウンド」のそれぞれのフェーズでの「投資」について説明していきます。

シード期

いちばん最初のこの段階では、企業・事業が形式上はまだ起業していないという状態です。
そのため、投資を受けられるか否かは企業側のビジネスプランに依存します。

このフェーズでは従業員も少なく、提供するサービスや商品の開発を行っている段階であるため、調達した資金は従業員への給与や、サービス・商品の開発資金へとあてられます。

ここでの資金調達の規模は数百万円~1000万円ほどになります。
他のフェーズに比べ、必要とする資金は少なく、容易に集められると思えます。

しかし、繰り返しにはなりますが企業・事業はまだ起業前であり、存在があまり周知されていません。

そのため、投資してくれるのは限られた人(知人や友人など)です。
ここで大きな力となってくれるのはエンジェル投資家やベンチャーキャピタル、シードアクセラレーターになります。

これらの投資家は、企業・事業のビジネスプランや創業者の人柄を投資するか否かを判断材料とします。

そのため、彼らの協力を得るためには、企業・事業の未来に可能性を感じさせるような創業者による前準備が、投資による資金調達を成功させるためのカギとなります。

アーリー

アーリー期は起業してすぐの時期を指します。
このフェーズでは、起業して間もないということもあり、市場の確保が完璧ではなく、赤字の状態ということが多いのが現状です。

創業資金などの出費が多いため避けられない過程にはなりますが、投資する側から見ると投資リスクが高い状態になります。

そのため、投資家に納得してもらえるように、企業・事業が掲げるビジネスプランの実現性を今まで以上にアピールしていく必要があり、それが資金調達を成功させるカギとなります。

このフェーズでの資金調達の規模は2000万~5000万円ほどとなりますが、投資による資金調達だけでは上手く回せなくなることもあります。
今回は主として投資方法を挙げているため詳しく触れることはありませんが、この段階に入ったのであればエンジェル投資やベンチャーキャピタルに加えて、銀行や行政からの助成金などの融資に頼ることもできます。

シリーズA

このフェーズでは事業が本格化し、商品やサービスの知名度が上がり、顧客が増え始めます。

シリーズAは事業の成長段階ではありますが、軌道にはまだ乗り切れていない段階です。
そのため、売り上げをのばすための人材登用や設備増設などに大きな資金が必要になります。
この時期は財政状況が不安定になりがちな特徴があります。

このフェーズでの資金調達の規模は数千万~2億円程度であるのに対して、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家から受けられる投資額の相場は1000万~3000万円程度となります。

このフェーズでの代表的な投資家はベンチャーキャピタルです。
ベンチャーキャピタルは資金以外に、経営に対するアドバイスなど様々なものを提供してくれます。

ここからは企業・事業の方向性が決まってくるため、多くの資金が必要となりますが、それぞれのビジネスプランに合った投資家を慎重に選んでいくことも考えていく必要があります。

シリーズB

このフェーズではシリーズAを乗り越えた結果、企業・事業の経営が軌道に乗り安定化して、経営が伸びていく時期です。

従業員も増え、ビジネスモデルが検証されて、確立へと向かっていきます。
なので、企業側は今の先の成長を見据えた、綿密な資金面の計画を練ることが必要です。

会社を大きくするためにはそれなりの資金が必要となり、シリーズAと同じようにここでもベンチャーキャピタルの協力が不可欠です。

このフェーズに突入することができる企業は多くはないため、様々な投資家の目にも止まりやすくなります。

とはいえ、ここでの投資額の規模は数億円が目安となってくるため、投資家に企業のビジネスプランの実現性を強くアピールしなければなりません。

また、資金調達額が大きくなるため複数のベンチャーキャピタルからの投資を受けるケースが多くなります。

シリーズC

いよいよスタートアップ事業の最終段階になります。
黒字経営が安定化し、更にはIPO(企業の上場)やM&A(企業の合併や買収)を視野に入れる段階です。

経営が安定しているため事業に次第では、投資などによる資金調達を必要としない場合もありますが、海外や全国への事業拡大を行うには大規模の資金を必要となり、その額は資金は数億~数十億と言われています。

ここでは、これまでのフェーズで培ってきたつながりをフルに活用するとよいでしょう。

では、投資する側はフェーズごとにどのような投資を行えばいのでしょうか。

シード・アーリー投資

シード・アーリーのフェーズでは、起業家のアイデアやビジネスプランに対して、それを市場に広めるために必要な資金提供になります。

初期段階の投資になるため、リスクはあるものの、投資へのリターンは非常に大きいものになる可能性があります。

この段階では、まだ企業が市場に出ていないため投資への判断が難しいと言えることが難点です。

ミドル・レイト投資

この段階での投資スタイルは2パターンあります。
1つはこれまで通り、企業の需要に対して資金を提供するプライマリー投資です。

もう1つは、シード・アーリー期に得た株式などを譲り受けるセカンダリー投資になります。

ここでは企業の実現性などがある程度認識できているため投資判断は比較的しやすいです。
対して、投資の規模がやや大きくなるため投資の難易度は上がります。

ここまでは主に「投資ラウンド」のフェーズに対しての「投資」について書いてきました。
なので、次は投資する側からみた「投資」について書いていきます。

ベンチャーキャピタル

先ほどから頻繁に名前が出てきていますが、そもそもベンチャーキャピタルとは何なのでしょうか。

ベンチャーキャピタルは、大きな成長が見込まれる企業を対象に投資する会社のことです。
特徴としては、企業の株式と引き換えに多額の投資を行ってくれるため、投資された資金に関しては返済する必要がないというところにあります。

また、企業の将来を見込んでの投資になるので、資金以外にもシェアオフィスの設置、企業家や投資家の集まるイベントの開催、投資家などの連携などといった様々なサポートを用意してくれる場合もあります。

このように十分と言えるほどの協力をしてくれるベンチャーキャピタルではありますが、どのようなメリットがあって投資をしてくれているのでしょうか。

答えは、単純です。
投資した以上の利益を得ることです。

投資先が大きくなり、株式上場へとたどり着けば、得た株式を売却するなどして投資した額の何倍にも及ぶ額を回収することができます。

実例として、今では誰でも利用可能なFaceBookですが、設立して間もないころに約1200万ドルを投資した株は約90億ドルへ跳ね上がり、数年の間にとてつもない利益を生みました。

しかし、シリーズBに書いたように軌道が安定するまでに至る企業は多くはありません。
その場合はもちろん大きな損失となります。

このようなハイリスク・ハイリターンな投資ではありますが、投資側、企業側の両方から見ても事業の大きな成長を追及するのにはもってこいの方法になります。

個人

では、ベンチャーキャピタルなどといった会社でなければ投資ができないのか。
そんなことはありません。

最近ではクラウドファンディングなどといった簡単にできる投資方法がたくさんあります。
クラウドファンディングではある程度の支援額が幅広く設定されていて、それぞれに対してリターンが決められていたりします。(私自身もたまに利用しますが本当に簡単です。)

個人で投資を行う目的として挙げられるのは、ベンチャーキャピタル程の規模ではありませんが企業の成長を見込んで早い段階から投資し、将来的なリターンを期待することにあります。

他には、スタートアップ企業への投資ではベンチャー投資促進税制という税制上の優遇措置が受けられる場合もあります。

これは、投資を行った年に所得税から(投資額-2000)円の免除、またはその年の他の株式譲渡益から対象企業への投資額全額免除できるといったものになります。

また、スタートアップ企業への投資を行うことによって企業の成長を近い位置から見届けることができます。
これが好きで投資するという人も少なくはありません。

しかし、繰り返しにはなりますが、スタートアップ企業は経営基盤が安定していないため軌道に乗り成功する例が多いとも言いにくい状況にあります。
そのため、後々のリターンを期待して投資する場合は十分に考慮したうえでの投資を行うようにしましょう。

このように、個人単位での投資は比較的少額から参加できるという手軽さに魅力があるといえます。

まとめ

スタートアップ企業の主な資金調達源は「投資」にあります。

「投資」を考える場合に「投資ラウンド」という考え方が重要になってきます。
「投資ラウンド」は5つのフェーズに分けられていて、対応した企業の状態があります。

  • シード…起業前の段階
  • アーリー…起業直後の段階(スタートアップ段階)
  • シリーズA(エクスパンション)…事業を本格的に開始する段階
  • シリーズB(グロース)…事業がやや軌道に乗り始めた段階
  • シリーズC(レイター)…黒字になって経営が安定し始め段階

シード期では起業の前段階であり必要な資金が少ないため投資相場が少ないのに対して、シリーズが進むにつれ企業の拡大のために必要な資金がかなり大きくなってきます。
このようにフェーズ毎での投資の規模は大きく変わっていきます。

また、それぞれのフェーズに合った投資スタイルもあり、シード・アーリー期は「投資判断が難しいが投資の規模が小さいの」というに対して、ミドル・レイト期では「投資判断が比較的容易だが投資の規模が大きい」といった違いがあります。

このように、「投資ラウンド」と「投資」は切っても切れない関係にあります。

そして、スタートアップ企業の大きな助けとなるのはベンチャーキャピタルです。
ベンチャーキャピタルは企業の大きな成長を見越し、資金のみならず様々な面でサポートをしてくれる者になります。

投資の規模が大きくハイリスク・ハイリターンの方法になりますが、成長を追求するのにはこれ以上にない方法です。

対して個人による投資は、クラウドファンディングなどによる利用のしやすさが魅力です。
比較的少ない投資によって将来的なリターンや税制上での優遇措置などを受けられる可能性があります。

これから事業をはじめられる方は、これまで紹介したように投資ラウンドを意識して、適切な方法で資金調達を行うとよいでしょう。