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vc投資を受ける3つの注意点〜明確な目的と基準を知る~

VC(ベンチャーキャピタル)とは、高い成長が予想されるスタートアップや未上場企業に対して投資を行う投資会社のことです。
投資したスタートアップが株式上場した場合、手持ちの株式を売却することで利益を得ることを目的としています。

VCがスタートアップに投資を行う際には判断基準があります。
投資の判断基準と聞くとハードルが高そうなイメージですが、内容としては基本的なことがほとんどです。
投資基準をクリアするためにあなたが行うべきことと注意すべき点を解説していきます。

スタートアップが投資を受けられるVC

VCには種類がいくつかありますが、スタートアップとして投資を受けるためには、自分のスタートアップの内容にあったVCを選ぶことが重要です。
VCの中にはスタートアップの内容に対するサポートがつくVCもあれば、投資のみで内容には関与しないというVCもあります。
あなたが第三者からのアドバイスを必要としているのであれば、サポート付きのVC投資を受けることも選択肢に入れると良いでしょう。

ステージとフォーカスの意味

VCのステージの種類には以下の3種類があります。
・全ステージで投資を行うVC
・アーリーやシード期に特化したVC
・レイターに特化して巨額の投資を行うVC

この中であなたが必要とするのはアーリーやシード期に特化したVCとなります。全ステージに対応したVCは幅広く対応しているために選択肢の一つにはなりますが、スタートアップの投資に対する知見を豊富に持っている、アーリーやシード期に特化したVCを選択するのが良いでしょう。

また、フォーカスとはスタートアップの事業内容を選定して投資を行うことです。
ジャンルを問わず投資するVC、ITサービス、エネルギーなどに特化した投資もあれば、ニッチな専門知識に対して投資を行うVCもあります。
あなたのスタートアップ事業の内容がVCのフォーカスとマッチしているかどうか、あらかじめ調べておく必要があるでしょう。

ビンテージとは

VCにはビンテージという考え方があります。
ビンテージとは、例えばワインの熟成度という同じ考え方で、設立年ごとにパフォーマンスを比較される考え方です。
実はスタートアップにとってVCのビンテージには重要な意味を持ちます。

VC投資は一般的に運用期間が10年に限定されているため、例えば5年前に設立されたファンドから出資を受けた場合、5年以内に株式上場やM&Aをすることが求められます。
もしそれに間に合わなければ株の買い戻しを要求される可能性もあるのです。

VCの目的

あなたのスタートアップの目的とVCの目的は最終的には「利益を上げること」で一致しているものの、事業を実現して社会に役立ちたいというあなたの思いと、VCの利益を上げる目的をいかにマッチさせるかが投資を受ける重要なポイントになります。

VCが投資を行う第一目的は?

VCが投資する第一目的は前述の通り「リターン」です。

VCは出資者からお金を集めてファンドを組成し、それを運用して運用益を分配することによって事業を行っています。
つまり、ファンド全体の財務リターン(資回収金額と投資金額との差額)の確保が事業目的ということになります。

一般的なVCファンドに対する出資者が望むリターンは、利回りとして10~20%程度です。

VC自身の実績を上げる

VCは投資家から預かった資金を運用しています。そのため投資の運用成績を最大化しなければなりません。
出資者へのリターンを最大化すると同時に、ファンドの成績が良くないと次のファンドを行えなくなってしまうため、VC自身が生き残るためにもアピールできる成績を残す必要があるのです。

VC投資案件のほとんどが他のVCや起業家などから紹介を受けるため、業界内での評判が非常に重要となります。
スタートアップに対して献身的な対応をして事業を成功させることで、ただの投資ファンドだけでないという評判を業界内で得ることができるため、新規投資案件の紹介を受けやすくなるのです。

VC投資判断基準4つのステップ


スタートアップに投資判断をする基準には4つのステップがあります。

  • 1. 経営チーム
  • 2. 市場性
  • 3. 競争環境
  • 4. 投資条件

この判断基準はVC自身が事業を進めるための大きなポイントになります。
VCによっては優先順位が変わることもありますが、判断基準の内容についてはステップの順番が異なっても同じです。
VCの判断基準は、最終的には資金を出資している投資家へのリターンを生み出せるかどうかにかかっています。

では詳しく解説していきます。

経営状態の確認

まずは経営チームとして、スタートアップで勝つための体制が備わっているかを見られます。
スタートアップ初期の場合にはメンバーが完全に揃っている必要はありませんが、必要な体制と足りない体制が何であるかを理解していることが重要です。
強い経営チームには「コアバリューが明確」「俯瞰でマーケット全体を見渡せる」「メンバーの情報共有が迅速」「短期のKPIが設定できる」「損切りのポイントが明確」などの体制が整っています。
経営メンバーを揃える際は、これらの体制が明確になった後に集めるという方法でも問題ありません。

マーケティング性チェック

スタートアップの場合、事業そのものの成長スピードよりも、マーケットがいかに将来性があるかが投資の判断基準となります。
あなたのスタートアップマーケットの現在の規模と3年から5年後程度のマーケット規模の予測が重要となります。マーケットが日々変化している現在では、今のマーケット規模よりも将来性が重要なポイントです。

競合とは戦わない

スタートアップは競争を考える際に、ライバルの中でどう勝ち抜くかよりも、そのマーケットがブルーオーシャンであるかどうかが重要になります。
競合とする相手をピックアップする場合も、大企業などが行っているサービスそのものを競合とするだけではなく、同じカスタマー価値を持つ、違う形態のサービスも競合としてピックアップする必要があります。
また、あなたがそのマーケットに参入したことによって、マーケット全体の競争の影響も含めた仮説を立てておくとなお良いでしょう。

投資リターン

投資基準を本格的に検討するのは上記3項目がクリアできていて、投資の方向性が見えてきてからになります。
VCが投資家に対してリターンを試算する方法は、成功した場合の時価総額であったり、マーケットでのシェア、リスクによってリターンの倍率を算出するやり方です。
スタートアップ事業は不確実性が高いため、時価総額は、事業計画上の当期利益に対して、業界の類似会社の株価収益率を掛けて算出するというオーソドックスな方法で計算することがほとんどです。

このようにVC投資の判断基準は、現在の状況よりも、将来のポテンシャルと実現するうえでのリスクが重要視されています。

投資を受ける際の注意点

投資を受ける際にはどのようなことを気をつけなければいけないでしょうか。
VCや投資家との関係性の面から解説します。

VC担当者の実績を調べる

VCから投資を受ける際の注意点として、VCそのものよりも担当者の評判や実績を調べることが重要です。
評判がよく実績のある担当者は、スタートアップの成長を信じて投資が実現するように進めてくれます。そして投資した後もただ見守るだけではなく、間違った部分を指摘してくれたりするなど手厚いサポートをします。
VCの第一目的は利益を上げることであるため、いろいろな夢を実現したいというスタートアップメンバーの思いとは相反することがあります。
そんな時にスタートアップをどう導いてくれるかがVC担当者の腕の見せ所になります。

明確なマネジメントプレゼンを行う

マネジメントプレゼンでは、スタートアップメンバーが投資メンバーに対して直接プレゼンを行いますが、マネジメントチームの内容はVCの判断基準の中でも一番重要なステップとも言えます。
一般的にはマネジメントプレゼン全体でおよそ1時間ありますが、そのうち20分程度がプレゼンテーション時間で、残り40分が質問やディスカッションの時間となります。

VCの担当者は投資家メンバーが気にしているポイントを把握できるので、あらかじめ確認した上で漏れのないプレゼン資料を作成しておきましょう。

またもう一つの注意点として、プレゼンの中身や資料作成に時間を割くのではなく、ディスカッションの準備に時間を割区ことが大切です。
ディスカッションは、投資家の意見に合わせることが重要なのではありません。不確実性の高いスタートアップでは正解をアピールする必要はなく、ロジカルに戦略を分析ができていて、環境の変化にどう対応できるかが注目されます。

財務・法務面でのチェックを行う

プレゼンテーションの結果を踏まえてVCと投資家の間で「デューデリジェンス」と言われる財務面・法務面でのリスクがないかどうかの検証が行われます。
財務諸表には載っていない隠れ債務がないかという確認と、反社会的組織との関係の有無の確認となります。

自分自身ではそのようなことはないと思っていても、メンバー内にそういった動きがあると全てが台無しになります。
仲間を疑うというわけではありませんが、悪意がなく反社会組織とつながってしまっていたというケースもあるため、今一度メンバー全員と話し合ってそのようなことが起こらないように確認をしましょう。

まとめ

VCからの投資判断基準を満たすためには、「ここに投資したい」と思わせるような準備と対策が必要です。
スタートアップ事業に共感を得るためには、経営メンバーが長期的な視点で世の中の課題やニーズをロジカルに分析できていること、そして何より経営メンバーが内部にも外部にも信頼される存在であることが必要になります。

そのためにあなたはまずVCの投資内容とスタートアップの内容にミスマッチがないかを調べ、さらにVCの担当者とも事前によく話し合って信頼しあえる関係を築くことがスタートアップを成功させられるかどうかのキーポイントとなるでしょう。