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【億万長者になれる?】株式譲渡による事業売却とは?~気になる相場は?~

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・自分の夢を実現するために起業する!
・起業してお金持ちになりたい!

このように思い立ったはいいものの、どうやって創業者は巨万の富を得るのか、その実態はベールに包まれています。

「数億円の資金調達に成功した!」というニュースはよく見かけますが、創業者自身がお金をもらっているわけではないですよね?

事業で稼いだ利益の多くを給料でもらうから創業者はお金持ちなんでしょうか?

実は、そうではないケースが多いのです。

事業が成功することで創業者が経済的な成功を収めるというのは間違ってはいないのですが、そこにはあるカラクリがあります。

今回は、「株式譲渡による事業売却」を中心に、創業者が多額の経済的利益を得るまでの道のりをたどってみましょう。

なぜ成功した創業者は、自分の資金でさらに別の事業を立ち上げたり、自らが投資家となって後進のベンチャーを育成したりできるような資金が手に入れることができたのかがよく理解できると思います。

起業から事業売却までのロードマップ

以前は、起業したら会社を大きくして大企業にしたい!という思いで会社を立ち上げる創業者が多かったと思います。

しかし、アメリカのシリコンバレーでの多くの起業家の影響か、創業時から会社の「イグジット」を考えて計画的に事業を立ち上げるケースが日本でも主流になりつつあります。

「イグジット」の意味

では、「イグジット(EXIT)」とはどういう意味なのでしょうか?

イグジットとは、「出口」の意味で、事業を投資家に売却して創業者が今まで事業を大きくしてきたことに対する見返りとしての利益を得ることを指しています。最終的にどのように見返りを得るかの戦略を、イグジット戦略、と言ったりもします。大きく分けてイグジットには事業譲渡と株式譲渡によるものがあります。

事業譲渡によるイグジット

これは、事業に関わる資産(不動産、特許、Webサイト、顧客や取引先との関係、従業員との契約関係)をまとめて譲渡するやり方です。

会社にいくつか事業がある場合に、事業を他の事業と切り分けて譲渡し、その対価はそれを生み出した会社が受け取ります。たくさんのユーザーがいるWebサイトを売却する、というような場合は、事業譲渡の一種と言えるでしょう。

株式譲渡(M&A)によるイグジット

一方、株式譲渡によるイグジットは、創業者の保有する株式を他の投資家(大企業やベンチャーキャピタルなど)に売却することで、対価は創業者が直接受け取ります。この株式譲渡のことを一般的には「M&A」と言います。

ベンチャー企業の9割以上は株式譲渡によるイグジットを目指します。

その理由には、株式譲渡のほうが手続きが煩雑でないこと、そして、税務上株式譲渡益にかかる税金(利益の約20%)のほうが、いったん会社が受け取った譲渡対価を給与で受け取る場合の税金(所得税で最高税率45%)よりも安いといったことが挙げられます。

したがって起業から事業売却までのロードマップは、いかに株式の価格を上げるか、という観点から組み立てる必要があります。

売却相場って実際にはあるの?

会社にどれぐらい資産があれば1株いくら、というように売却相場があれば計画が立てやすいですよね。

しかし実際には、一般的な株式の売却相場というのはありません!上場している株式は、会社ごとに値段がついていますよね?

つまり株価は会社によって異なるのです。

では、株価はどのように決まるのでしょうか?ベンチャー起業家が知っておくべき株価の算定方法を2つだけ紹介します。

純資産法

もっと基本的な方法で、論理的にも納得のいく方法です。単純に会社の資産から負債(銀行借入など)を引いた残りが「純資産」として株式の価値とします。純資産1000万円で100株の株式を発行していれば、株価は10万円です。

マルチプル法

「マルチプル」とは掛け算のことです。類似の事業を行っているほかの企業が実際にどのぐらいの株価がつけられているかを参考にして、「一株当たりの利益の〇〇倍」を株価にしよう、というように算定します。

例えば、類似企業の一株当たりの利益が2,500円の時に株価が50,000円と評価されていたならば(20倍)、うちの株価も一株当たりの利益を20倍して株価を算出しよう、というわけです。

増資の度に株式価値が上がっていくカラクリ

実際は、他にも様々な株価算定の方法があり、それらを総合的に判断して株価を算定します。

しかし、事業計画の段階では単純に将来大きな売上・利益を上げてもらうことを見込んで、「現在売上の〇〇倍」「現在の利益の〇〇倍」などを目安にして株価の目安を算出します。

ここまでくると、株価が上がっていく理由がわかりましたか?単純に会社の預金が増えたから株価が上がるのではありません。

「投資家の将来に対する期待」が増えたから株価が上がっていくのです。

例えば、株価が利益の3倍、とつけられたら将来に対する期待は少ない、と言えますし、30倍、あるいは50倍の株価がついた場合には、将来に対する期待は非常に大きい、と言えるでしょう。

起業してイグジットするまで、ベンチャー企業は事業を大きくするために何度か資金調達をするケースが多くみられます。

事業がうまくいっているならば、投資家には、将来もっと株価が上がっているだろうということを見込んで、前回の増資よりも高い金額でもいいから株式を引き受けたい!というインセンティブが働きます。こうして株価はどんどん上がっていくのです。

相場、という言い方が適切かどうかはわかりませんが、売却時の利益規模が3000万円ほどであっても、イグジット時の株価が5億円、10億円がという金額になることは珍しいことではありません。

事業計画と資本政策

このように、株価は将来に対する期待を基に算定されます。それでは、投資家は将来に対する期待をどのように量るのでしょうか?
それは創業者が立てた事業計画をベースにするしかありません。

ベンチャー企業の事業計画

事業計画の策定は、どのような顧客に何を提供して利益を上げるのか、といった根本的な命題に向き合うところから始まりますが、「創業者利益を得る」という観点からは、貸借対照表、損益計算書に基づいて数値計画を作成することが最も重要です。

なぜならば、投資家が株価を算定するためのベースとなる数値は現在の財務諸表の数値と事業計画上の数値しかないからです。

投資家は、前回の増資から、どのように数値計画を達成していったのか、あるいは数値計画未達だったとしてもどのような活動をしていたのかについて、シビアな目で検討します。

事業計画が絵に描いた餅に終わっていないか、人員計画、商品のプロモーション計画、顧客獲得計画など、当初の計画とかけ離れた実績ならば、経営者の計画性に問題があると評価されても仕方ないでしょう。

初めに立てた事業計画通りに事が進むことはまずありません。中には事業内容自体を大幅に変換しなければならない事態に陥ることも少なくありません。それでも、数値計画がある程度達成されているならば、投資家の信頼を勝ち得ていく結果となるのです。

そういった意味でも、数値計画については、シビアに、かつ大胆に策定し、経営者の胆力(たんりょく)と情熱を投資家に示さなければなりません。

資本政策

もう一つ、事業計画と同じぐらい重要なものが「資本政策」です。

計画通りに売上が大きくなっている、顧客基盤も広がってきた、さてイグジットだ!と考えたとき、株式が創業者以外の他人に握られていたらどうなるでしょうか?

これまで述べてきた通り、創業者利益のほとんどは、株価の上昇によって得られるものです。

その時、株式の半分を別の投資家に握られてしまっていたら創業者利益も半分になってしまいます。この通り、自分が会社の株式の何割持っているか、という問題は、イグジット時にどれぐらいの利益が得られるかに直結する問題です。

創業時からイグジット時まで、どれぐらいの割合でだれが株式を保有しているかを時系列にまとめた表を「資本政策表」といいます。

イグジットまで、創業者が100%株式を持っているならば一番シンプルですね。しかし、創業時にお金を出し合って創業する場合もあるでしょう。

また、増資のたびに新株を発行すれば、その分自分の株式割合は少なくなります(薄まっていく、という意味で「ダイリューション」といいます)。イグジット時には、株価は創業時の数百倍になることもありますから、少しの割合の差でも数千万円の違いになってきます。

これが、資本政策をきちんと定めなければならない理由です。

もちろん、金銭的な面だけではなく、株式をだれがどのぐらい保有しているか、ということは、会社の重要事項をだれが決定できるのかと直結します。この点でも、資本政策は会社経営の中で最も重要な事項の一つです。

いかがでしたでしょうか。「事業売却」という言葉は、あいまいに使われることが多いですが、その中身が理解できましたでしょうか?
ぜひ、あなたも起業するときには、イグジットまでをイメージして事業計画を立ててみましょう!晴れて事業をイグジットできれば、そこからは、経済的にも社会的なしがらみからも自由な人生がまっています。