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【教育現場をDX化するプラットフォームSaola CEOインタビュー】在留外国人が日本で生活しやすい共創基盤を創る

皆さんの周りに、外国人の方はいらっしゃいますか?

学校内にも、職場にも、そして街中にも、日本中いたるところに外国人がいますよね。新型コロナウイルスの影響で訪日外国人数は減少したものの、それを除いて見れば、日本に来る外国人数は年々増加しています。

しかし、日本に来る外国人全員が満足な経験を得られるわけではありません。

今回紹介するSaolaは、外国人が日本語を学ぶための教育インフラを支援するサービスです。

SaolaのCEO上尾さんをお招きして、Saolaが目指す、在留外国人が日本で経験をより豊かにするための「共創基盤」の作り方についてお伺いしました。

上尾さん:立教大学経営学部在学。4年間の飲食店でのアルバイトで多くの在留外国人と仕事を経験する。そこで感じた在留外国人を取り巻く多くの課題を解消するためにSaolaを立ち上げる。

教育改革プラットフォーム「Saola」を通じて、教育現場を可視化する。

上尾
上尾
上尾です、よろしくお願いします。
こちらこそよろしくお願いします。ではまずはじめに上尾さんの自己紹介をお願いします。
StartUp CEO石川
StartUp CEO石川
上尾
上尾
はい。上尾と申します。立教大学経営学部に在学中で、株式会社SaolaのCEOをしております。Saolaは、教育インフラを DX するためのプラットフォームを提供しており、日本中にある日本語学校をターゲットにしたサービスです。 Saolaには2つの特徴があります。1つがデータの一括管理、もう1つがモチベーションの定点観測です。 これらの特徴を生かし、教育現場を可視化することで、将来的に在留外国人が日本で多くの経験ができる環境を作っていきたいと考えています。
ありがとうございます。 在留外国人の日本語教育に特化したサービスなんですね。
StartUp CEO石川
StartUp CEO石川
上尾
上尾
おっしゃる通りです。しかし今後は、日本語教育にとどまらず、在留外国人が日本で就職するフェーズまで、いわば在留外国人が日本で経験する、さまざまな事に関してサポートできるサービスでありたいと思っています。


株式会社Saola

もうすでに導入されている教育機関はあるのでしょうか?
StartUp CEO石川
StartUp CEO石川
上尾
上尾
はい。今年の6月1日にα版をローンチしました。複数の教育機関に導入していただき、フィードバックを頂きながらサービスの改善を行っています。ありがたいことに、いずれの教育機関からもご好評をいただいており、さらに多くの教育機関に導入していただこうと考えている次第です。

多くの在留外国人との関わりから、啓発だけではなく、お金の流れを作る大切さを学んだ。

上尾さんは、どのような背景からSaolaを立ち上げたのでしょうか?
StartUp CEO石川
StartUp CEO石川
上尾
上尾
きっかけは、高校1年生の時に、飲食店でアルバイトをしていたところまで遡ります。当時、社会的に日本に来る留学生の数が一気に増えたような時期で、僕が働いていた飲食店にも15人ほど留学生がいました。

留学生のほとんどがベトナム人だったこともあって、彼らとコミュニケーションをとるために、独学でベトナム語を勉強したんです。 しかも、アルバイトが禁止の高校だったにも関わらず、ものすごい時間アルバイトをしていたので、その飲食店に関する知識も豊富にありました。そういった背景から、15人の留学生のマネジメントを任されていました。

そんなに早い時期からマネジメントに携わっていたんですね。
StartUp CEO石川
StartUp CEO石川
上尾
上尾
そうですね。かなり珍しいパターンだと思います。そんな中で、多くの留学生が帰国を余儀なくされている、という現実を知りました。彼らは日本に来て色々なことを学び、将来のキャリアのために頑張っているにも関わらず、です。
そうだったんですね。なぜ出戻りをしてしまうのでしょうか?
StartUp CEO石川
StartUp CEO石川
上尾
上尾
大きな理由としては、企業側の受け入れ体制ができていないという理由です。 具体的に言うと、企業と外国人がカルチャーフィットするか否かが判断できないことにあります。

言語的な壁があり、就職が難しいということもありますが、留学生の多くが日本語検定を取得し、日本で働く上で十分な日本語力を習得しています。しかし、外国人だからという理由で、彼らのパーソナルな部分を見ないまま不採用とするケースが多いため、そのまま自国へと帰ってしまう留学生が多くいます。

なるほど。多くの方が自国へと帰ってしまっている現状を知りませんでした。高校生の時から、「在留外国人がどのようにすれば日本で働けるのか」ということを考えていらっしゃったんですね。そこからなぜ、教育の改革へ舵を切っていたのでしょうか?
StartUp CEO石川
StartUp CEO石川
上尾
上尾
まず初めに教育の改革を行う理由は、外国人が日本で働く一連の流れを見たときに、一番初めに教育があったからです。日本人であれば、最初に教育を受けたところから、働くまでの道筋がある程度見えているものです。

しかし、在留外国人を取り巻く従来の環境は、教育から就職、労働までの各ステップが全く見通せません。これらはすべて、教育の段階で定量的にデータを取得し、利活用することで、その後の環境が大きく改善されるのではないかと考えています。だからこそ、まず初めに教育の改革に着手しました。

在留外国人の教育を可視化することで、彼らが経験する教育以外のものも豊かになっていくということですね?
StartUp CEO石川
StartUp CEO石川
上尾
上尾
おっしゃる通りです。 高校生の時は何も分からず、ただ漠然と課題感を抱えていただけでした。しかし大学生になり、経営学を学びつつ、多くのベンチャー企業の立ち上げや、コンサルティングファームでの仕事に携わることで、少しずつ自分のやるべきことが見えた。

NPO 法人を立ち上げたこともありますが、できたことは問題を啓発することだけ。何も問題を解消することはできなかった。それに気がついたからこそ、自分でサービスを立ち上げ、お金の流れをしっかりと作らなければならないということがわかり、Saolaを立ち上げました。

三つの側面から、”共創基盤”をより強固なものにしていく。

上尾さんの熱い想いが伝わってきました。では、Saolaは今後、どのように展開していくのでしょうか?
StartUp CEO石川
StartUp CEO石川
上尾
上尾
三つの方向に事業を伸ばしていきたいと考えています。

1つ目は純粋な売上の増加、ビジネス的な側面です。顧客数をどんどん増加させていき、最短で利用者様にとってテクノロジーの力で少しでも幸せになれるようなサービス開発を行います。

2つ目は多文化共生という側面です。現在、各小中学校には、少なくとも1人の外国人がいます。しかし、学校側も生徒側も、そういった外国人とのコミュニケーションは容易ではありません。

彼らが日本語をすぐに習得でき、環境に馴染めるようにサービスを提供していきます。また、災害大国日本において、実際に災害が起こった場合は、日本人も外国人も同様に助け合いが必要になります。

その際にコミュニケーションが円滑に行えるよう、サービスの幅を広げていきたいと考えています。学校だけにとどまらず、多くの方が共に日本で生きていけるようなサービスにしていきます。

3つ目は教育だけではなく、在留外国人の就労を支えるという側面です。 実際に彼らが企業に就職し、マネジメントが円滑に行えるよう、事業を横展開していくことを考えています。また、そこで得た情報を教育現場でも利用することによって、 Saolaが考える在留外国人が日本に住みやすいような環境を作ることができるでしょう。

多方面でのアプローチを考えていらっしゃるんですね。
StartUp CEO石川
StartUp CEO石川
上尾
上尾
そうですね。新型コロナウイルスの影響で、教育業界をはじめ、さまざまな業界で変革の時期が訪れています。

しかし、弊社が取り組んでいくのは、単なる教育改革でありません。 在留外国人に関する社会課題の解決こそ、弊社が取り組んでいることであり、教育改革はその一部 。労働力不足が叫ばれる現在の日本において、テクノロジーの力だけでは、その問題を解消することができません。

だからこそ弊社は、Saolaというサービスを通じて社会課題に挑戦していきます。

目指すは教育インフラのDX。 Saolaが教育の全てを可視化する。

では最後に、Saolaの具体的なご説明をお願いします。
StartUp CEO石川
StartUp CEO石川
上尾
上尾
はい。Saolaは、教育インフラを DX するためのプラットフォームです。

従来の教育現場では、情報が独立し、かつ定性的なものばかりだったため、データ同士を連携させることができず、効率的な教育を行うことができませんでした。Saolaはそういった透明性の低い状態を解消するために生まれたサービスです。

saolaサービス内容

ありがとうございます。先程お話しいただいた2つの特徴についても詳しくお話を伺いできますか?
StartUp CEO石川
StartUp CEO石川

上尾
上尾
「データの一括管理」と「モチベーションの定点観測」ですね。
まず「データの一括管理」についてご説明します。そもそも教育は、学習計画、授業、課題やテスト、成績評価といった、複数のフェーズで成り立っています。お伝えしたように、これらのフェーズでは独自のデータが取得できるものの、それらを連携してデータを活用することはありませんでした。その理由は、データが定性的にしか取れなかったからです。テストや課題の点数は定量的に取得できますが、学習計画や成績評価などの管理は定性的なものが多く、データとして紐づけることが困難でした。Saolaでは、上述したフェーズを全て一括で管理し、生徒や先生同士での情報共有を可能にしています。これが1つ目の特徴ですね。
私が学生時代を思い返しても、先生たちは紙で管理をしているイメージがありました。それでは一括管理もできませんし、効率よく業務が行えないように思えます。
StartUp CEO石川
StartUp CEO石川
上尾
上尾
まさにその通りです。社会的にデジタル化が進んでいるとは言え、まだまだ改善の余地はあります。そして、教育現場において最も定性的なものが「生徒の学習に対するモチベーション」です。
確かに。もはや「気持ち」の部分ですもんね。こちらはどのように定量化するのでしょうか?
StartUp CEO石川
StartUp CEO石川
上尾
上尾
2つ目の特徴である「モチベーションの定点観測」こそが重要だと考えています。

これは細かいスパンでのアンケートの実施を行い、一連の教育のなかで、生徒のモチベーションにどのような変化が起きているのかを可視化するために行います。

従来では勉強に関するモチベーションの判断は、模試などで実施されるアンケートが主な手段でした。

しかし、模試が行われるのは3ヶ月に1回ほどであり、大きな単位でしか結果を見ることができません。そのため、学習のどの部分がモチベーションに影響を与えるのかを特定することができず、その後の改善へと繋がらないものとなっていました。

しかしSaolaでは、毎日の授業終わりに3問、月末に32問のアンケートを実施します。モチベーションを定点観測することで、詳細なデータを取得することができ、成績と合わせて生徒について知ることができます。

なるほど。模試でアンケートをする際は、毎回大量のアンケートに答えなければならず、嫌な気持ちで行っていました(笑)。生徒からしても毎日3問だったらハードルは低いですし、先生からすれば大量のデータが取得でき、学習の進捗と合わせて確認できるから、授業の改善も期待できますね。
StartUp CEO石川
StartUp CEO石川
上尾
上尾
おっしゃる通りですね。これらはデータを一括管理し、モチベーションという可視化されにくいものを定量化するからこそ、実現できるものだと考えています。これら以外にも、出欠管理やチャットでのコミュニケーション、教材のアップロードも行えるため、教育現場における全ての情報をSaolaで管理できるようにしてあります。
まさにDXですね。実際に利用されている教育機関からも好評だということですが、成果としてはどのようなものが挙げられますか?
StartUp CEO石川
StartUp CEO石川
上尾
上尾
そうですね。実際に数値として上がっているもので言えば、教師が採点や成績管理を行う際の工数が55%削減されたというデータが出ています。

また、Saolaにさまざまな機能が供えられているため、複数のサービスを利用するよりも56%も費用が削減されるという成果が出ています。また、学校やNPO法人が、何か新しい新規事業を行う際のきっかけになっているというお声もいただきました。

Saolaはスマホ1台あれば利用できるため、日本に住む日本語学校に通いたい方だけではなく、海外の方を対象としたサービスを立ち上げている教育機関もあるそうです。

さまざまな場所で利用されるサービスへと発展していきそうですね。上尾さん、本日はありがとうございました!
StartUp CEO石川
StartUp CEO石川